FITS の規格は 1988年のIAU総会で IAU の FWG (FITS Working Group) が決定権を持つこととなった。
2012年北京IAU総会で IAU の組織再編が進められ、FITS に関係するのは Division B (“Facilities, Technologies and Data Science”) となった。2015年には Division B 傘下の Commission が再編され、Commission B2 “Data and Documentation” が FITS に関係することとなる(それまでの Division B の Commission 5 とほぼ同様)。2018年12月の時点では、Commiion B2 に Data Representation Working Group (DRWG) が設けられ FWG を引き継ぐことになっているが引継ぎが完了していないため、規約改定などは暫定的に DRWG の Special Expert Group (FITS SEG) が行っている(メンバーはほぼ FWG から引継ぎ)。
こうした状況のため、ここでは従来の FWG での FITS の規約の扱いについて説明する(必要に応じて FWG等 を FITS SEG 等に読替えのこと)。
2018年12月現在 IAU-FWG の議長は Lucio Chiappeti (IASF, Italy) である(副議長は当面置かず。元の任期は 2012-2015 だが継続している)。
FWG のメンバーは計 22名(https://fits.gsfc.nasa.gov/iaufwg/iaufwg.html参照。日本からは金光理(福岡教育大))。
FWG には FWG 自体やその他の事項の決定のために EC(Executive Committee) が設けられ、メンバーは FWG の議長(といれば副議長)、前議長、4つの旧地域委員会(北米、EC、日本、オーストラリア/ニュージーランド)の委員長である。IAU の旧 Commission 5 下の Virtual Obervatory Working Group も ECメンバーと考えられている。旧 Commission 5 の議長も伝統的にオブザーバーとして参加する。将来の EC の構成は地理的、分野的、波長的なバランスを取るとともに、主要なデータハンドリング組織のバランスにも配慮して決めるべきだろう。EC は典型的には満場一致をベースに議決するが、必要に応じて単純な多数決(現状では 4/7以上)で議決することもある。
データ構造の開発者が既存の FITS フォーマットにしっくりこない部分がある場合、新たな拡張を開発、提案することができる (もちろん新しい拡張は既存のフォーマットに影響を与えるものであってはならない)。
新しい拡張が正式に FITS の拡張として認められるまでの手順は以下の通りである(https://fits.gsfc.nasa.gov/iaufwg/iaufwg_rules.html)。
(注: 従来の地域委員会が関わる手順は、インターネット時代にそぐわないとしてよりフラットでスピーディな手順に改定され 2014年1月1日から適用されている。)
- 【事前準備】FITS スタンダードの定義に影響する新しい提案は、FWGへの提案の前に、fitsbits@nrao.edu メーリングリスト(モデレータのあるML)にポストされ、一般的な FITS コミュニティでのコメントを受けるべきである。場合によってはその話題に特化した ML が作成されて議論されるかもしれない。EC がこうした予備的な議論が収束し、関係者の大部分の合意を得た提案になったと判断したら公式な提案として考慮されることとなる。
- 【公開コメント】オフィシャルな承認の最初のステップは、fitsbits@nrao.edu でのパブリックコメント期間を設けることである。この期間に一般の FITS コミュニティメンバーや FWG のメンバーがコメントやサジェッションをする。提案者はここで出たコメントなどに対応した修正を施す。このパブリックコメントの期間は通常 4週間以上取るが、EC は必要に応じて議論が結論に至るまで伸ばすこともできる。
- 【EC によるレヴュー】公開コメント期間の後、EC はメンバーに対し投票準備ができているか確認をする。FWG の議長は準備のできていないメンバーがいないか内々の調査をする。これは議論を続けたいメンバーや投票期間に不在のメンバーがいないことを確認するためである。同時にメンバーは投票に対し反対を考えているか(もしそうなら理由)を問われる。もし '反対' の投票を考えるメンバーがいる場合は、EC は正式投票に入る前に全員の満足が得られるような妥協案を得る努力をする。EC は正式投票をするかどうかについて以下のようなファクターを考慮する。
- 提案は明確に記述され技術的に合理的か
- FITS ユーザコミュニティのコメントに答える努力を十分にしたか
- パブリックコメント中のコメントやサジェッションすべてに適切に対応したか
- 提案のデモンストレーション中に相互運用性のテストがされているか。このテストは提案内容にもよるが、可能なら異なるコンピュータプラットホーム上で異なる独立したソフトウェアの実装での例もあればよい。
- 【IAU-FWG での最終投票】正式な投票の前に議長はメンバーに内々に調査をする。もし `No' の投票を考えるメンバーがいたり、事前の議長への知らせなく実際に `No' の投票があったりすると、投票プロセスは満場一致に向けての妥協案の交渉のため3カ月停止することになる。この必須の遅延期間は少数意見が適切に考慮されることを保証するとともに FITS コミュニティが重要な事項について満場一致で同意を得るという伝統を保つためにある。3カ月以内に受け入れ可能な妥協案が達成されない場合は、FWG での投票がそのまま続けられるかもしれない。FWG のメンバーは通常 3週間の投票期間を設けられ、(`賛成', `反対', `保留')を議長にメールする。投票が有効に決するには(`賛成', `反対', `保留' を合わせて) FWG メンバーの 3/4以上が投票する必要がある。有効投票となったら投票数のうち 3/4以上の`賛成'で承認となる。投票プロセスの確認のため、議長は `反対' や `保留' の投票の日時の確認をできるようにして、同意の投票をしなかったメンバーが自分の投票が確実に記録されたことを確認できるようにする。投票が完了したら、FWG 議長は投票結果を(名前は出さず) fitsbits@nrao.edu に投稿する。提案は FWG で承認されたら即座に効力を発揮し(提案自身に異なる発効時期が明記されている場合を除いて)、FITS フォーマットの公式なスタンダードの一部となる。
Osamu Kanamitsu
2019-02-15