- タイムスケールを特定するため TIMESYSキーワードの使用が推奨される。これは、HDU 中のすべての時間に関するキーワードと日付に対して、原則として適用されるタイムシステムの設定をする。(恒星時や重心補正などの、他のタイムスケールへの変換のための情報を提供するキーワードやデータコラムの追加を排除するわけではない)。各々の HDU は複数の TIMESYSキーワードを含むべきではない。当初公式に許容される値は以下の通りである。
- UTC
- (Coordinated Universal Time(協定世界時); 1972 年以降定義される)
- UT
- (Universal Time(世界時); 1925 年以降グリニッジ標準時 (GMT) と等価。1972 年以前では UTC と等価)
- TAI
- (International Atomic Time(国際原子時);“うるう秒を含まない UTC”, 1997-07-01 では UTC より 31 秒進んでいる)
- IAT
- (International Atomic Time(国際原子時); TAI と同じで別の略し方をしただけ)
- ET
- (Ephemeris Time(暦表時); TT の前任にあたり 1984 年まで有効)
- TT
- (Terrestrial Time(地球時); 1984 年以降 IAU の標準タイムスケール。ET から連続しており、TAI と同期している (TAI に対し 32.184 秒進んでいる))
- TDT
- (Terrestrial Dynamical Time(地球力学時) = TT)
- TDB
- (Barycentric Dynamical Time(太陽系力学時))
- TCG
- (Geocenteric Coordinate Time(地心座標時); 1977-01-01 以降 TT よりおよそ 22 ミリ秒/年の割合で進んでいる)。
- TCB
- (Barycentric Coordinate Time(太陽系座標時); 1977-01-01 以降 TDB よりおよそ 0.5 秒/年の割合で進んでいる)。
参考文献として次のものをあげておく。
Explanatory Supplement to the Astronomical Almanac, Seidelmann P.K., ed.,
University Science Books, 1992, ISBN 0-935702-68-7
https://tycho.usno.navy.mil/systime.html
GPS 時間 (TAI より 19 秒遅れている) の使用は推奨されない。
- デフォルトでは時間の測定は、検出器 (実際には観測所) で TAI と同期した時間 (TAI, UTC, TT) で計られたと考える。ただし、座標時 (TCG や TCB) や TDB のように、明白な座標原点を持つシステムの場合には、座標システムの原点で観測が行われた時間と考える。将来の FITS ファイルでのタイムスケールの規約では他の組み合わせを許容するかもしれないが、このデフォルトの考え方は保持されるべきである。こうしたデフォルトを設定するのは、生の観測データはほとんど TAI と同期した時計でタグがつけられており、座標時や TDB への変換は通常空間的な変換を伴うからである。この場合、道筋の長さの違いが補正されるべきであることを意味する。注意すべきことは、TDB-UTC の差はほぼ周期的に変動し、観測天体の位置によって、1年の周期と500秒の振幅を持つことである。また、位置が明白でない場合 (干渉計のように) 精確な位置を、例えば地心直交座標のような形で、特定することが強く勧められる。
- “TT” は IAU の標準である。これは “TDT” や “ET” と等価であると考えられる。ただし、“ET” は 1984 年以降のデータには使われるべきではない。Explanatory Supplement の pp. 40-48 を参照のこと。
- もし TIMESYSキーワードがない、または有効な値を持っていない場合は、1972 年以降の日付にたいしては、“UTC” が、1972 年以前のデータでは、“UT” が仮定される。
- 例
これまでのことから、1996 年 10 月 14 日の表現にはいくつかの書き方があるが、そのうち 4つの具体例を挙げる。
DATE-OBS= '14/10/96' / Original format, means 1996 Oct 14.
TIMESYS = 'UTC ' / Explicit time scale specification: UTC.
DATE-OBS= '1996-10-14' / Date of start of observation in UTC.
DATE-OBS= '1996-10-14' / Date of start of observation,also in UTC.
TIMESYS = 'TT ' / Explicit time scale specification: TT.
DATE-OBS= '1996-10-14T10:14:36.123' / Date and time of start of obs.in TT.
- この付録で提案された規約は、既存の High Energy Astrophysics FITS 規約の上に構築された RXTE アーカイヴで採用されている、ミッションに特有なものの一部である。以下を見よ。
https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/xte/abc/time_tutorial.html
https://heasarc.gsfc.nasa.gov/docs/xte/abc/time.html
VLBA プロジェクトでは、TIMESYSではなく TIMSYS キーワードを使う規約を採用しており、現在は、UTC と IAT の値を許している。次の p.9 と p.16 を見よ。
http://www.cv.nrao.edu/fits/documents/drafts/idi-format.ps