1988 年には IAU FITS Working Group が結成され、FITS 規約の維持や改良、将来の拡張、FITS 使用の推奨、FITS キーワード辞典の改良などの統括をすることとなり、1989 年には IAU Commission 5 FITS Working Group (IAU-FWG) が浮動小数点の表現に関する公式の合意に達した。
この当時 FITS の各種活動をサポートしていたのは NASA/Science Office of Standards and Technology (NOST) の一部として設置されていた FITS Support Office だったので、NOST ではこれらの FITS 規約を1つの成文としてまとめあげるために NOST FITS Standard を作成することとなった。 最初の原案 (draft) の作成は、NOST の召集する Technical Panel が作成し、世界の天文コミュニティでの一定の議論を経て改訂がなされた後、IAU commission 5 に提出され、3つの地域 FITS 委員会 (北米、ヨーロッパ、日本) での投票、IAU FWG での投票で正式な標準規約 (FITS スタンダード) となった。
こうして 1993 年には最初のバージョンが、 Definition of the Flexible Image Transport System (FITS ) (June 18, 1993, NOST 100-1.0) として出され、その後、1994 年には Image Extension、Blocking、Binary Table が正式に FITS の拡張として認められる、などの変化があり、それらを取り入れた 100-1.1 が 1995年9月28日に出た。
NOST standard は、その後 1998年4月の draft standard バージョン 100-1.2 を元に改訂された satndard バージョン 100-2.0 が 1999 年 3 月に公開され、3 つの地域委員会の承認を経て、2000 年 10 月に正式に IAU FWG での投票の結果、全員一致で承認され、新しい FITS のスタンダードとして認められた(参考文献[13])。
その後、FITS Support Office が NOST の元を離れたことを受け(現在は HEASARC の元にある)、改訂作業は IAU FWG のチェアマンだった Pence の元に設けられた Technical Panel で改訂原案を作成し、IAU FWG で議論・投票して改訂することになった。 この結果、2005年4月に可変長配列導入を受けた 2.1、12月に64ビット整数の導入を受けた 2.1b が策定された。 2.1b の後、2年ほどかけて改訂された 3.0 が 2008年7月に策定された(参考文献[27])。
2012年には IAU FWG のチェアマンが Lucio Chiappetti に交代し、Lucio の音頭取りによって FITS レジストリに登録された規約などを積極的に Standard に取り込む作業が進められた。 2013年に承認された WCS time 論文の内容や、2016年に承認された各種の規約などを取り込んだ 4.0 が 2018年に策定され、投票の末、承認された。(現時点ではまだ出版には至っていない。10)
2019年1月時点では、これが FITS についての公式文書となっている。
ここでは現時点での正式版である FITS Standard 4.0 のうち reference になる部分の概要や IAU により正式採用されている拡張等に関して解説する。