もし座標軸が線形なら、真の座標は単に CRVALia によって与えられる参照点からのオフセットを加えるだけでよい。 そうでない場合は、オフセット量と CRVALia それに他のパラメータを使って真の座標値を決める関数の規約について合意が必要となる。
ここでは、天文学的な極座標のペア (天球上の経度と緯度) と様々なシステム (様々な球面投影法で表現されるもの) との変換の規約について扱うことにする。 この場合には線形座標でのオフセット値 を特定の球面投影法を使った局所 (native) 球面座標 に変換する計算をすることになる。 球面投影のタイプは CTYPEia キーワードの 6 から 8桁目で特定され、座標のペアの両方の軸に対して同じでなければならない。
例えば、投影面が平面の代表的な投影法である zenithal (または azimuthal) 投影の場合にはパラメータを指定するために新しいキーワード PVi_ma と投影タイプとして AZP を使う。 特に の場合は投影タイプは TAN、 の場合の拡張された投影タイプは SIN となる (TAN については後の具体例参照)。
これらの関係式を使うと、
のように、局所 (native) 球面座標が計算できる (前項の図5参照)。
最後にこうして得られた球面座標のペア を球面上で回転させて天球座標に変換すればよい。 天球座標のタイプは CTYPEia キーワードの最初の 4桁で表わされ、AIPS の慣例から赤道座標系では 'RA-' と 'DEC-' (赤経・赤緯)を使い、その他の天球座標では 'xLON' と 'xLAT' を使う。例えば銀河座標系では x=G として 'GLON' と 'GLAT' (銀経・銀緯)とする。 他にも黄道座標は x=E、日心座標は x=H、超銀河座標系は x=S が決まっているが、惑星や月などを表す場合には 'yzLN' と 'yzLT' を使う記法も許される。 CRVALia キーワードは 局所 (native) 球面座標での参照点 (上の zenithal 投影の場合は北極点、すなわち の点) の天球座標での座標値を表す。 球面上での回転を完全に表すための 3 番目の角度パラメータは、新キーワード LONPOLEa で記述し、デフォルトでは である。 これらから式 (19) により必要な変換が得られる。
これらによると原始FITS で定義されていた CROTAi キーワードは必要でなくなるが、古いキーワードを使ったファイルは新しいキーワードで表現しなおすことができる。