Binary Tables

ASCII 表形式は、表の項目数が多い場合、大きなスペースを必要とする。 文字への変換にかかる時間もばかにならない。 ASCII 表形式は、浮動小数点を扱うのに必要だったのだが、IEEE 浮動小数点規格の採用により、表形式にバイナリ浮動小数点を含ませる道が開けた。 一方、VLBA 関係で表の項目に配列を使う必要が生じた。 かくして、W. Cotton (NRAO) によりバイナリ表形式が設計され、'3DTABLE' と名付けられた。 3DTABLE は、1987 年初めに AIPS (Astronomical Image Processing System) の一部としてリリースされた。

1990 年初め、NASA はその関連プロジェクトすべてにおいて、生み出されたデータを FITS フォーマットで提供することを決定した。 その時ちょうど、高エネルギー関係のデータ構造の設計が行われていた。 この分野のデータは通常イベント・リストの形になり、文字列にすると膨大なものになってしまうので、バイナリを用いた表形式が強く求められていた。 こうした圧力の元、1991 年 4 月、Cotton は 'BINTABLE' と命名された標準バイナリ表形式の最初の規約案を提示した。 これは、3DTABLE を基として、これに対する意見を加味したものである。

1989 年末、Green Bank での単一電波望遠鏡での標準フォーマット開発のための会合で、D. Wells はバイナリ表形式のフィールドに多次元配列を使用できるようにすることを提案した。 さらに、行毎に配列の大きさを変えることが可能になるような機構に関心が持たれた。 この件は、1991 年 4 月のヨーロッパ FITS 委員会の集会で D. Tody により取り上げられた。 議論の後、Cotton と Tody により、ポインタ・データを用いた表形式を提案した。 多次元フィールドや可変長配列のフォーマットや、それらのためのキーワードやフィールドフォーマットを記述した公式のテキストが Cotton と Tody によって 1991 年 10 月に公開された。

1991 年 7 月ころ、W. Pence (GSFC/HEASARC) は文字列の配列を単一の長い文字列と区別する点について疑義を提出し、議論の結果、副配列に関する規約が 3 番目の付録として付加された。 改訂された BINTABLEの提案は Cotton, Tody, Pence により、1993 年 5 月に公開された。 1994 年の春には IAU-FWG はこの提案の本文を FITS のスタンダードの一部として是認した。 3 つの付録 -- 多次元配列、可変長配列、文字列配列 -- は是認された標準規約の一部には含められなかった。 これらは推奨はされるが要求はされない規約となった。

IMAGEBINTABLEファイルの ESO, IUE, Goddard Space Flight Center の HEASARC 間の交換のテストは、1992 年に開始されたが、FITS フォーマットがテープ上のものからビットストリームとして認識されるようになるにつれ、この種の交換はテープではなく、anonymous FTP でなされるようになった。 1994 年初めには、BINTABLEの改訂を受けてさらなるテストが正式投票に向けて行われ、STScI と ESO 間、ESO と GSFC/HEASARC 間での IMAGEBINTABLEデータの交換が行われた。 1994 年 6 月 15 日、IAU-FWG の議長である P. Grosbøl は、ブロッキングルールと IMAGE, BINTABLE拡張の正式な是認を宣言した。 これらについては既に FITS スタンダードの一部なので、詳細は 5.8節と第II部の文献[10]を参照のこと。

なお、当初は BINTABLE の付録の B.1: 可変長配列 と B.2: 多次元配列 はスタンダードの一部になっていなかったが、2005年4月7日に IAU-FWG で正式にスタンダードの一部に取り入れることが承認された。



Osamu Kanamitsu
2019-02-15